飲食店開業で成功するためのヒント
飲食店開業に必要なこととは?スキルや資金調達・開業の手順と注意点
飲食店開業を成功させるには、いろいろな条件があります。
料理が好きだから、得意だからといった理由も大切ですが、それだけで飲食店を始めると痛い目を見るかもしれません。
開業準備で揃えたいものを含め、飲食店開業に必要なものや資金、気を付けたいポイントを解説します。
飲食店を開業し、順調に経営していくためには料理以外のスキルも重要です。
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この記事の目次
飲食店開業に向いている人・必要なスキル
飲食店を開業したいと思う人の多くは料理が好きで得意です。
しかし、実際に飲食店を開業して経営していくためには料理以外にも得意なことやスキルが必要です。
飲食店を開業したい場合には、料理も大切ですが、それ以外に必要なスキルを持っているかどうか自己分析してみましょう。
経営能力
経営能力は飲食店だけでなく、多くの事業で必要であり、もっとも重要なスキルと言えます。
開業する店の事業計画を立て、集客目標や収益目標を達成するために行動するためのスキルです。
魅力的で人が集まる店にするためには、周囲の環境を冷静に分析し、戦略を立てることも必要となります。
決断力がある人
飲食店経営では、自分の経営能力を生かし、実行していくことが大切です。
そのためには、様々な選択肢からより良いものを選び取る決断力も必要です。
ゆるぎない信念をもって決断し、進んでいくことで、店にオリジナリティを出し、従業員からの信頼を得ることができるでしょう。
チャレンジ精神がある人
チャレンジ精神も、経営者として必要なものです。
堅実な経営はもちろんですが、新しいことを試していくことで、その店独自の魅力を見つけるチャンスが広がります。
店を開業すること自体も、大きなチャレンジとなるため、怖がらずに一歩踏み出せる事は大切です。
マネジメント能力
飲食店を開業するためには、店と人をまとめるマネジメント能力も必要不可欠です。
飲食店の経営では、スタッフの採用から雇用形態の決定、教育といった様々な人事戦略を練り、実行していかなければいけません。
スタッフが増えれば人間関係も複雑になるため、揉め事への対応力も必要です。
人を育てられる人
飲食店でスタッフを雇用する際には、雇ったスタッフを一人前に育てる能力も必要です。
人を育てることで、接客や調理のレベルが安定し、自分は経営者として経営戦略を練ることに専念できます。
また、スタッフの質が向上することでクレーム予防にもなるでしょう。
接客・コミュニケーション力
接客や仕入れ先との交渉のためには、コミュニケーション能力も重要となります。
スタッフと円満な関係を築くためにもコミュニケーション力は大切です。
職人のように黙々と料理を提供する人気店もありますが、やはり最低限のコミュニケーション能力がないと悪影響が出やすくなります。
人と接することが好きな人
飲食店は人に料理を提供する仕事のため、人と接するのが好きなことが大前提です。
料理が好きなだけでは、スタッフや取引先とも良好な関係が築けません。まわりの関係者を巻き込むことで、円滑な経営ができるのです。
顧客に寄り添える人
顧客の気持ちを察知して、寄り添えることも飲食店経営では大切です。
店に来てくれる人ニーズ、周辺住民の特性などを考えてより良い店づくりをすることは、開店前のコンセプト作りから開店後まで、ずっと必要なことです。
人を喜ばせようと考え続けることで、常にニーズを探り、顧客の期待に沿い続けることができるでしょう。
調理・メニュー開発能力
調理能力も、飲食店開業には欠かせません。自分で調理場に立つ場合はもちろん、そうでない場合もスタッフにメニューを教える時に必要となります。
また、メニューの開発能力も店独自の魅力を出し集客するために重要です。
季節やコンセプトに合わせたアレンジや予算の範囲内でおいしいメニューを開発する創意工夫の力は店の強みとなるでしょう。
料理が好きな人
料理が好きなだけでは飲食店経営がうまくいくとは限りませんが、料理が好きでないと長く続けることができません。
自分の料理を心から愛し、自信を持って提供できることが大切です。
スタッフに調理を任せる場合でも教育するのは自分なので、料理が好きで自信があることは必要となります。
調理師免許はなくてもOK
飲食店を開業するのに料理が好きなことは必要ですが、調理師の免許までは必要ありません。
調理師免許があると箔が付き、当然取得の勉強や実習などで調理の知識も身に尽きます。
しかし、免許はなくても飲食店は開業できますし、調理スタッフも免許のない人を雇用しても問題はありません。
飲食店開業の流れ
飲食店開業には、様々な準備が必要です。
一から準備を始めて飲食店を開業する場合には数カ月レベルの長期戦となるため、きちんとスケジュールを立てて計画的に進めてください。
飲食店を開業するまでに必要な手順と流れを解説します。
コンセプト設計
初めにやっておきたいのが、店のコンセプト設計です。
どんな店にしたいか、どんな店なら利用客が来てくれるか、検討します。業種や客層、客の利用動機、価格帯といった、様々な観点から決定していくことが必要です。
また、コンセプトが決まったらそれに見合う物件探しです。反対に、出店を希望する土地がある場合には、物件や立地に合わせてコンセプトを練ることもあります。
事業計画書作成
コンセプトが決まったら、それに基づいて事業計画を立てます。
事業の目的やビジョン、事業の内容やマーケティング戦略、売上げや利益の予測など、店の経営に必要な構想をしっかりとまとめましょう。
事業計画では資金の額や開業した後の収支シミュレーションも考えることが必要です。事業計画書を作成しておくと、融資の申し込みの際にも使えます。
資金計画作成・融資申し込みなど
事業計画とともに、資金計画も作成し、資金調達の方法も考えることが必要です。
資金計画では飲食店開業に必要な設備や備品、店舗の借入費用や仕入れ費用、広告宣伝費など、かかる費用を記載します。
さらに売上高や粗利益を予測したものを落とし込み、収支計算をしてください。
融資を希望する場合には、申請書類を整えて審査を申し込みます。その際には自己資金もある程度確保してあると金融機関から好印象です。
自己資金なしで融資を申し込むと限度額が下がる、信用が得られないといったことが起こる可能性もあります。
店舗内外装設計・施工
物件が決まったら、コンセプトに合わせた内外装の設計と施工に入ります。店舗物件の決定と内外装の施工は、開業の2~3カ月前には取り掛かりたいものです。
内外装が完成したら、厨房設備や什器を入れます。
メニュー開発
店で提供するメニューの開発を行います。コンセプトに合ったメニュー作りは店の肝です。
かかるコストや価格設定も考えながら、独自性のある魅力的なメニューを考案しましょう。
申請や届け出
飲食店開業に必要な諸官庁届け出や手続きを行います。保健所や消防などで行う手続きの前に取得しなければいけない資格もあるため、早めに準備をしておいてください。
届け出は開店の1カ月前でも間に合いそうですが、必要資格については開業を決めた時点で取得しておいた方が安心です。
飲食店開業に必要な資格と手続きについて詳しくは後述します。
スタッフ採用・教育
店の準備と開業手続きと同時に、スタッフの求人や採用面接、スタッフ教育を行います。オープンに間に合うように、調理や接客の研修を進めてください。
事前に調理マニュアルや接客マニュアルを作成しておくと研修にも役立ちますし、接客や調理のレベルも一定に保ちやすくなります。
販促
すべての準備が整ったら、オープンに向けての販促活動を行います。オープンをチラシやSNSで告知し、来店を促しましょう。
オープン記念としてサービス券を提供したり、ノベルティを配付するなど、工夫を凝らすことも大切です。
また、販促活動はオープン時だけでなく継続的に行っていきます。
飲食店開業に必要な資格と申請
飲食店開業に必要な資格と申請手続きについて解説します。飲食店を開業するには、いくつかの資格の取得と申請が必要です。
どれも難しいものではありませんが、申請の許可に時間がかかる場合があるため、早めに行動しましょう。
「食品衛生責任者」
飲食店を開業するにあたって必要となるのが、「食品衛生責任者」の資格です。
食品衛生上の管理運営にあたる責任者の資格で、この資格を持つ人が1人でもいないと飲食店を開業できません。この資格を取得しないと申請できない手続きがあります。
食品衛生責任者の資格は、各都道府県で実施している講習を受講することで取得可能です。講習は通常1日で終わりますが、1万円程度の受講費がかかります。
また、調理師免許を持っている人は自動的に取得できるため、受講の必要はありません。
「防火管理者」
「防火管理者」は、飲食店を開業するにあたり、必要となる可能性がある資格です。収容人員が30人以上のお店を開く場合のみ必要な資格なので、状況に応じて取得しましょう。
収容人員の考え方は、客席だけでなく従業員数も含みます。30席未満の店でも従業員数に注意が必要です。
店舗の延べ面積が300㎡以下の場合には「乙種防火管理者」、300㎡以上の店の場合には「甲種防火管理者」の届け出が必要となります。
防火管理者の資格は、防火管理者講習を受けることで取得できます。講習は開店する地域の管轄消防署で、受講時間は「乙種防火管理者」が1日、「甲種防火管理者」は2日です。
受講費用は6000~8000円と講習種別などによって金額が違います。
保健所への届け出
保健所への食品営業許可申請はすべての飲食店で必要です。店の完成の10日前くらいまでに届けてください。この際に、食品衛生責任者の届け出が必要です。
食品衛生責任者の講習会の終了証を提出して届け出ると、後日営業許可が下りて営業できるようになります。
消防署への届け出
飲食店を開業するには、消防署への届け出も必要です。「防火対象設備使用開始届」は建物を新たに使い始める際に必要な届けですが、内装業者が届けることが多くなります。
また、火を使用する場合には「火を使用する設備等の設置届」も必要です。
警察署への届け出
警察署への届け出は、店の種類やサービス内容によって必要となるケースがあります。
「深夜酒類提供飲食店営業届」は、深夜12時以降にお酒を提供するための届け出です。営業の10日前までに届け出ましょう。
スナックといった客に接待行為をする店の場合には、「風俗営業許可申請」も必要です。こちらは営業の2カ月前までに申請してください。
開業に関する各種届け出
上記は、主に飲食店で必要な資格や届け出でしたが、それ以外に店を経営するにあたり必要となる届け出もあります。
税務署への開業届をはじめ、スタッフを雇用する際には労災保険や雇用保険、社会保険の加入手続きなどが必要です。
飲食店開業資金について
飲食店を開業するには、多額の資金が必要です。開業する前に、何にどれくらい費用がかかるか考えておき、自分に合う資金調達方法の準備を進めましょう。
飲食店開業にかかる費用目安
飲食店を開業するにあたってかかる費用は、小規模な店舗でもおよそ700万円以上と言われています。
その内訳としては、開業資金と当面の運転資金が含まれます。
開店当初は売上げが不安定にもかかわらず、仕入れや従業員への給料など、出費が多いため、余裕をもって費用を見積もっておきましょう。
開業資金
飲食店の開業資金としては、以下のようなものがかかります。
-
- 賃貸店舗の敷金と礼金・補償金
- 内装・外装工事費
- 厨房設備費
- 調理器具・食器類の費用
運転資金
運転資金としては、以下のようなものがかかります。
-
- 従業員への給与・社会保険料
- 店舗の家賃
- 水道光熱費
- 原材料費
- その他諸経費
開業から数カ月分程度の運転資金を見積もって、準備しておくと安心です。
資金調達の方法
飲食店の開業にはたくさんの費用がかかります。
開店に必要な資金をすべて自己資金でまかなうのは難しいこともあるため、融資など、外部からの資金調達も検討しましょう。
金融機関の融資
金融機関からの融資は、もっともメジャーで使いやすそうですが、開業前や開業間もない店に融資してもらえる金融機関は多くありません。
そのため、日本政策金融公庫を利用することが多くなります。
日本政策金融公庫は、創業したばかりの事業者にも柔軟に融資を行う金融機関です。
とはいえ、きちんと審査されるため、審査に通過できるように事業計画書などの必要書類を揃えることが大切となります。
補助金や助成金
補助金や助成金は、融資とは違って返済義務の生じない資金調達方法です。
ただし、これらの制度は誰でも必ず利用できるとは限りません。
それぞれの補助金や助成金には利用できる条件がありますし、審査によってふるいにかけられることもあります。
飲食店の開業に使える補助金や助成金には、以下のようなものがあります。
都道府県には空き店舗活用促進事業も
飲食店の開業では、都道府県で実施されている空き店舗活用促進事業も使えます。
各都道府県によって条件や補助の内容は異なりますが、空き店舗を利用することで家賃や改修費用などの支援を受けられる制度です。
自分の地域に制度がある場合には、積極的に活用してみましょう。
飲食店開業での注意点
飲食店の開業は準備にも時間や手間、コストがかかりますし、開業したからといって成功できるとは限りません。
そんな難易度の高い飲食店開業で失敗を防ぐためには、いくつかの注意を守ることが必要です。
コンセプト設計を甘く見ない
コンセプト設計は飲食店作りにとても重要なことです。コンセプトがしっかりしていないと店のイメージがブレやすくなり、独自の魅力や価値、強みを出し切れません。
コンセプトは店のイメージを決め、採用すべき従業員や作るメニュー、内外装に至るまで広い範囲に影響するものであるため、慎重に入念に定めていくことが必要です。
融資申請の前に物件を取得する
融資を希望している場合には、まずは物件の取得が必要です。融資は「何にどれくらいかかるから○○円必要」と厳密に申請する必要があります。
そのため、物件の契約書や施工の見積もり書など、細かい書類まで提出しないと、融資の申請はできません。
物件探しは施工業者と一緒に
物件探しは内装の施工業者と一緒にすることがおすすめです。施工業者がいることで、希望通りの内装になるか確認しながら物件を検討できます。
物件を契約してから希望の工事ができないことになっても、取り返しがつかないため注意が必要です。
自己資金は開業費に使い過ぎない
自己資金がない状態で開業するのも問題ですが、自己資金を開業費に使いすぎるのもいけません。
自己資金をつぎ込みすぎてしまうと、自身や家族の生活や将来が不安定になる可能性が出てきます。
融資や補助金などからも資金調達し、自己資金を使いきることのないように経営していきましょう。
まとめ
飲食店開業では、コンセプト設計から資金調達、物件探しといった、あらゆるシーンで気を付けたい点があります。
難しい資格は必要なく誰でも始められますが、誰でも成功できるとは限らないのが飲食店経営です。
飲食店の開業準備では、慎重に計画や分析をしつつも、時には大胆に決断していくことも大切です。
開業に不安がある場合には、まずは飲食店経営者として向いているかどうか自分を見つめ直してみましょう。
(編集:創業手帳編集部)